金融リテールマンへの提言、なぜ日本株営業が武器になるのか

いつもお世話になっております。KxShareの渡辺と申します。
2023年、本年も何卒よろしくお願いいたします。
新卒で入社した証券会社で、支店営業と機関投資家営業を行い、2021年に独立・起業。現在は、KxShare株式会社でクロスオーバー戦略の中小型ファンドの運営を行っております。

はじめに

拙い金融業界経験ではありますが、タイトルにもありますように、金融リテールマンへの提言ということで、なぜ日本株営業が武器になるのかというテーマについて書かせていただきます。

金融リテール営業の方の中には、投信やファンドラップメインのストック収入型の営業をされている方、仕組債や外債などの債券もので販売をする方、株式の営業が得意な方、他のソリューションを収益の柱とする方など色々な方がいると思います。金融リテールマンとはいえ、各々得意分野もあり、ソリューションも沢山ある中で、あえて株式の提案もしないし、そもそもそこに費やすリソースもないし、必要性を感じていないという方も少なくないかと思います。そもそも四半期決算なんて気にすらしないし、レポートも読まない、個別株の株価情報もそこまで追わないという方は、この文章になんの付加価値も感じないかもしれません。個人的な感覚値で恐縮ですが、株式営業に力を入れて、付加価値の高い株式提案をしているリテールセールスは多くなく、株式提案のクオリティが上がれば、差別化要因の一つになるのではないかとはここ最近ずっと思っていたりします。
(金融リテールマン、リテールセールスの定義は、機関投資家ではない人に対して営業をするセールスと定義付けます。)

多くの金融リテールでは、「エクイティストーリーで買ってもらう」ものの、具体的に何をどのように調べ、何に注目をすればいいのか分からないという方もいると思います。個別企業業績よりも、どの程度お客様に銘柄に対して夢を持ってもらえるか、儲かると思ってもらえるか、エモーショナルな部分メインで、株式営業を行っている人もいるのではないでしょうか。

エモーショナルな部分というのは、不要とは言いませんが、ロジカルに提案することが株式営業を武器にするには必要不可欠だと思っています。ロジカルな提案を差し上げることが付加価値になるでしょうし、株価(企業業績)をロジカルに考えられることが、セールス自身にとっても重要なことだと思います。支店で、先輩がこのように言っているから、そのセールストークを真似しよう。隣の支店の○○がこのように言っているから真似しよう。ということもあろうかと思います。人から学ぶことは大変大切なのですが、根本的な仕組みや注目すべきポイントが分かっていないと一過性のもので終わってしまい、決して身についたとは言えないでしょう。

つまり、自分自身で顧客に刺さるロジカルなセールストークを話せるようになることが、株式営業を自分の武器にし、再現性をもって顧客への付加価値として提供することができることにつながると思います。
もちろん、ロジカルに語れるからと言って、株の世界ですので、結果として利益がでないケースもあると思いますが、ロジカルに語れることで、あらゆる前提条件を元にした売買提案ができるようになり、益出し、損切りのタイミング等の共有を顧客とすることで、より信頼関係が築くことができると思います。顧客の資産をお預かりするプロフェッショナルとして顧客利益の最大化に貢献するべく、その可能性が1%でも上がる努力は惜しまずに行うべきだというのが私の考えです。

機関投資家セールスとして大切にしていたこと

まず、個別株営業について、機関投資家セールス(いわゆるリサーチセールス、エクイティセールス)として大事にしていた点、その経験からポイントをまとめます。(機関投資家営業というと、バイサイド、セルサイド共にございますが、私が行っていたのは、バイサイドに対しての営業で主にアセマネやヘッジファンドのPM、FM、アナリストの方がお客様でした)そして、リテール金融マンへ向けた提言を行います。

EPSに拘る

結論から言うと、なぜ、EPSに拘るのか。それは、株価はEPSによって形成されているといっても過言でないからです。ここでは株価=EPS×PERを主に論をすすめていきます。このEPS×PERという図式は、金融関係のテキストで幾度となく目にしてくるものですが、私の経験値だとそもそもこれが、常に頭に入って株式営業しているリテールセールスは全体の半分もいないと思っています。株価=EPS×PERという図式を頭に繰り返し叩き込みましょう。当たり前ですが、図式のとおり、株価が上がるというのは、EPSが上がるか、PERが上がるかによって形成されます。

株価は、このEPSの中期的な成長性と、その蓋然性によって決定されると私は捉えていますので、EPSを語ることができれば、株価をロジカルに説明することができると思っております。ある事象が起きた時に、どの程度のインパクトがEPSやその成長性、確実性に影響を与えるのかということを、常に考えるということが大事になってきます。
PERにおいても、投資家がその事業会社の将来のEPSをどのように見ているか、どのように期待しているかという観点から、PERを決定するパラメータにもEPSは絡んできます。利益が右肩上がりに増えていく会社のプレミアムは大きくなりますし、逆もしかりです。利益のボラが大きすぎるか、あるいは安定しているかによっても事業会社のプレミアムも違うと思います。

では、どのようにこのEPSに拘るのか、という議論になるかと思います。
機関投資家セールス(リサーチセールス、エクイティセールス)が入手できる情報源のメインは、自社のアナリストのリサーチレポートになります。これを使って営業を行うのが個別株営業の基本動作になります。
「いやいや、リサーチレポートなんて当たるかどうかわからないし、そんなものを使って営業しているリテールセールスはいないですよ」
「そもそも株価を当てにいくリサーチャーなんて少ないし、アカデミックな分析が多くて、銘柄の売買には参考にはならないです」などといった意見が聞こえてきそうです。
これらの意見に否定はしません。
といいますのも、間違いなく単純にアナリストレポートの内容を伝えるだけでは全く付加価値がないです。(RM構築のために、お客様先に、お客様の関係する会社のレポートを渡すという営業手法をとるリテール金融マンがいますが、それは個別株営業としての付加価値はほぼないですが、顧客に認識してもらうといった類の営業手法としては価値があると思うので、その点を否定するものではありません) そもそも、アナリストがレーティングを変えた瞬間、その投資判断はマーケットに織り込まれることになりますので、アナリストレポートをそのまま伝書鳩のように伝えるだけではセールス自身の付加価値にはなりません(逆指標になるアナリストもいるじゃないかという議論についてはここでは触れません)。

あくまでも、アナリストのレポートを活用して営業するというだけで、アナリストレポートで、○○アナリストがBuyといっているから、買いましょうということは個別株営業のすることではないということです。提案にセールスなりの根拠を持たせることが大事だと思います。アナリストが命を懸けて作った業績予想、EPSを把握し、その思考に至るまでの背景をレポートによって理解します。そのうえで、自分自身はその数字についてどのように思うのか、アグレッシブまたはコンサバティブな数字ではないか、来期、再来期本当にこの数字がでるのか、この辺りを、機関投資家セールスはアナリストとディスカッションしたり、投資家とディスカッションしたりするものです。
私の経験値ですが、リテール金融マンの中で、自社のアナリストのレポートをたまに少し目を通すという方はいても、毎日読んでいるというリテールセールスは全体の5%もいないと思います。(1%もいないのではないかと思います)ですので、アナリストレポートにしっかり目を通すという基本動作を継続するだけでも、差をつけられることになると思います。

一般的に、機関投資家セールスの役目というのは、バイサイドに対して
・自社のアナリストのリサーチ内容について咀嚼し、要点を伝える。
・要点だけでなく、その銘柄のアナリストのトーンの変化を伝える。
・周囲の投資家の様子を伝える。
・需給状況を伝える。
・決算説明会や取材などからのインプリケーションを伝える。
といったことがあります。もちろんお客様であるバイサイドの機関投資家の方は、当然アナリストレポートはすでに読んであり、そのうえでどのような投資行動をとるか判断済みであります。

【発行体IRへの提言】ファンダメンタルズ投資家は業績予想がしたい


(業績予想関連については、弊社の共同創業者兼ポートフォリオマネージャーの川合の考えをアウトプットしています)

その中でバイサイドの方にロジカルで役に立つレコメンデーションをするのは至難の業です。この時にノン付加価値の伝書鳩セールスをしても意味ないわけです。
例えば、前回のレポートに比べてどう変化したのか、今まで言及していなかったのに急に言及しだした、ニュートラルレーティングなのに強気なコメントが多いといったことは、セールスが一番にその変化に気づきやすく、付加価値になると思います。その変化に気づくために、日々のレポートの読み込み、アナリストとの対話などが求められます。
また、ほかの投資家がどのようなお考えを持っているのか、決算説明会や取材に同行してどのような発見があったか、などもリサーチセールスの行う業務になります。(各証券会社によってルールが違うので一概ではない)
リサーチャーのレポートを毎日読んでいれば、それだけで1~2時間、決算期だとさらに多くの時間を費やすことになりますが、バイサイドの方は、何社もある証券会社のレポートを読んだうえで、自分なりの分析をし、投資判断をしているので、もはや化け物です。

レポートを読み込んでリサーチャーの考えをインプットすることを基本動作に話してきましたが、この時も重視するのはEPSです
どのような考えでEPS予想を作り上げているのか、前提の考えがどのように変わったらEPSがいくら変化するのかなどに注目します。
EPSに拘るポイントは以下にまとめられます。

・株価の成長性は3年間のEPSの成長を考える。今期、来期、再来期のEPSをチェック。(その際に過去のEPSの成長も業績シートでチェック)
KxShare ボトムフィッシャー
・証券会社のレポートが読める人は、アナリストが業績予想で使っているEPSを参考にする(鵜呑みにするのではなく、前提がどうなっているのか考える)
・Aという事象が起きた時に、中期的なEPSの成長が、現在、アナリストが判断しているものよりもどの程度高くなるので株価は上昇するという思考を身に着ける。

また、アナリストレポートを読む時には、単発のレポートだけではなく、少なくとも過去1年分くらいは読むべきだと思っています。アナリストと直接コンタクトが取れない部署にいる場合はなおさら、アナリストの考え方を把握しにいくためには、過去から現在までの変遷を確認しておくべきです。

リテール金融マンへの提言

私のリテール金融マンへの提言は、ずばり「IPOに拘る」ということです

「いやいや、支店に100株しか来ない銘柄もざらだよ」
「IPOは支店の上司が全部、もっていって若手には恵まれない」
「そもそもIPOってだいたい儲かるでしょ」
「ボラティリティ高すぎて提案できない」
このような意見がリテール金融マンから聞こえてきそうです。
否定はしません。
しかし、IPOは考え方、捉え方次第では、営業の凄まじい武器になりえると私は考えています。上場前の配分をどれだけもらうか、当たるためにはどうすれば良いかといった思考は忘れてください。

まず、なぜIPOに拘るのか。
結論からいうと、上場後αの獲得チャンスがあると思うからです。
(IPO分析ができることで、新進気鋭のリテール営業マン、IFAが触れる機会の多いプレIPO企業とディスカッションがスムースになるといった議論はここでは差し控えます)

IPO株は、アナリストカバレッジがなく、マーケットコンセンサスもなく、企業業績に基づいた理論株価と実際の株価に大きな差がつく可能性があります
一般的に、前編でも述べたようにアナリストのレーティングや目標価格、EPSなどは、アナリストがレポートを発行してすぐにマーケットに織り込まれ、マーケットコンセンサスの一因となります。それにより、その銘柄の企業業績に基づく理論上の株価に、実際の株価が収斂していき、それまであったαが少なくなります。
しかし、現在の日本の株式市場では、中小型担当のアナリストが少なく、IPO株の上場後もカバレッジがつくのに時間がかかったり、ついても1名しかいなかったりと、中小型における情報元は多くありません。そのためコンセンサスが、少数のアナリストに依存してしまいます。
逆をいうと、上場前はもとより、上場後もαのチャンスが沢山あるということです。
IPO企業のEPSに拘り、自分なりに分析をして、フェアバリューを叩き出すことで、顧客に自信をもってセカンダリーでの買い付けを提案できることは、付加価値になると思います。
では、IPOを上場前から順を追って、簡単にどのように株価が形成されていくのか見てみることにしましょう。

 

≪IPOの価格の決まり方≫簡易版

IPOローンチ

証券会社が決めた想定価格が目論見書に記載され配布される。

発行体と、機関投資家のミーティング(通称ロードショウ)が行われる。機関投資家セールスはこのミーティングアレンジをする(ロードショウの前に、発行体と機関投資家セールスの模擬ロードショウ、通称ドライランがある)

ロードショウを終えた機関投資家から、セールスがフィードバックをもらう。(セカンダリーのフェアバリューについて)
株価がいくらであれば、いくら投資する。このバリュエーションだと投資見送りなと辛辣なフィードバックもある。

機関投資家セールスはその内容について、シンジケートに報告する。
フィードバックを適当にやる投資家、むやみに価格を下げようとする投資家は、トリートされないことなどもある

価格と、募集金額のおおまかな想定をして、仮条件が出される。

募集価格決定

簡単ではありますが、上記のようになると思います。
つまり、IPOの公募価格は、機関投資家からのフィードバックなどから相対的に決められるのです。
また、ご存じの方も多いかとは思いますが、個人投資家と機関投資家のアロケーション比率は、案件にもよりますが、一般的には、8:2であることが多いです。
つまり、個人投資家の方が、機関投資家より配分比率がかなり多いのです。(初値で売却しようと考えている個人が多いにも関わらず、です。そのあたりの議論はここでは控えます)
支店に100株しか来ないな、ネット証券でも配分もらえなかったな、というリテール金融マンや個人投資家のため息が聞こえてきそうですが、機関投資家は、もっと少ないパイを争っているのです。同じ機関の中でも、たくさんのPMやFMがファンドを持っている運用会社もあります。そのような複数ファンドある会社は、FM同士での殴りあいで決まるのでしょうか。いずれにしても、人気銘柄であればあるほど、IPOでの当選株数は少なくなるはずであります。
お気づきでしょうか。
機関投資家が買いたい、組み入れたい比率分買うことができなかった場合、残りの株数は、上場後のマーケットで買うしかありません。買い方は機関や、そのケースでの目標株価などによっても変わると思いますが、いずれにしても銘柄次第では買ってくるのです。そして、上場後は、アナリストカバレッジの機会もあり、それにより注目度があがり、流動性が増え株価上昇の機会もあると思います。
IPOの配分少なかったな…で思考が停止してしまうのは、大変もったいないのです。

↓どのようにIPO銘柄を分析すればよいのか、簡単に書いております。

新規上場・IPO投資に強くなる方法

実際にどのように個別株の分析をすればいいのか、銘柄についてどのように調べていけばいいのか等、疑問点のある方は、会社HPのお問い合わせより、ご連絡いただけましたらZOOMミーティングなどの機会をアレンジさせていただければと思います。
是非、IPO株に得意になり個別株営業に強くなりましょう。
KxShare – お問い合わせ

金融市場を今年も前に進めるために、ともに頑張りましょう。
改めまして、本年も何卒よろしくお願いいたします。