『キーエンス解剖 最強企業のメカニズム』に見る金融営業とキーエンスの営業の違い、そしてそこから学ぶこと

『キーエンス解剖 最強企業のメカニズム』に見る金融営業とキーエンスの営業の違い、そしてそこから学ぶこと

KxShareの渡辺でございます。
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本日は、タイトルにもあるように『キーエンス解剖 最強企業のメカニズム・西岡杏』を読んでみた感想と、それを踏まえ金融営業に活かすとするとどのような点で汎用性があるのか綴っていきたい。

結論から言うと、キーエンスの営業手法は細かくKPIが設定されており、営業が良くも悪くも仕組化されている印象をうける。そのため、個々の能力にとらわれず、皆ある一定の成果をだせる仕組みができている。逆をいうと、キーエンスのやり方に沿って営業活動を行っていれば、だれでも成果が出せるようになっていると感じた。逆に、金融業界の営業は、研修やインストラクター制度などの育成システムは整っているとはいえ、非常に属人的である。開拓手法や収益を生み出す方法も非常に属人的で、そのノウハウが社内に蓄積されていない。当然、事例集などは共有されるはずだが、それは後日談として多少の脚色もある。大事なのは、だれでもその通りにやれば開拓ができて、収益を稼ぐことができるようにするという点。そしてこの点は、セールスの人間性や性格などパーソナルな部分を凌駕する、凌駕できるような仕組みづくりができているのがキーエンスの特徴である。キーエンスの人には悪いかもしれないが、金融営業で成果を出している人はキーエンスにいったら必ず成功することができると思う。一方、キーエンスで成功したからといって金融営業で成功できるとは限らないと思う。それくらいキーエンスの営業は仕組化されている。

アポは1日5件から1分単位で書き込む外報5件以上のアポがないと外に出させてもらえないどこを訪問したのか、だれと会ったのか、反応はどうだったのか、何分そこにいたのか、アポに向けどのような準備をしたのか。このようなこと細かい外報を書くことで、営業パーソンの管理をしている。キーエンスの営業管理は大変厳しい。

逆に、金融営業パーソンにおいては、今月の予算に基づく自分自身の成果を出したら、翌月の数字のために数字を調整したり、収益を多くいただけるお客様に極端に偏って営業したりするなど、セールス一人当たりの収益にアップサイドがある可能性もある。特に、課長クラスのセールスは、一人当たりにかかえる顧客数が多くなっており、カバーしきれていない話も各社から聞く。実態はわからない部分も多分にあるが、真相はいかがなものか。営業先で車に乗りながら少し休憩する、というのは営業パーソンあるあるであると思うが(休憩するのも仕事のうちという理解)、キーエンスはそうとはいかない。業務時間のすべての時間を顧客のために費やす時間としてお客様と向き合うという思想があるので、1分1秒たりとも無駄にしたい

さて、本書から私自身が学んだことと、今後の金融営業において活かしていきたいと思う点を述べてみようと思う。
キーエンス流の営業手法と切っても切り離すことのできないKPIの管理・設定、これは自社の経営においても大変参考になるものだ。訪問回数、接触した担当者の階層、面談時間、反応率、商談決定率などのあらゆるKPIを作り自社で管理する。営業に強いといわれる証券会社でも、少なくともこういったKPIの管理はあくまでも結果ベースのもので、経緯についてのKPIというのはそこまで精緻にとってはいないのではなかろうか。結果のKPIではなく、経緯のKPIを重要視するというのは大事な点である。収益などの結果ばかりに拘ると、自分のことしか考えていないような商いが発生して、結果としてお客様にご迷惑をおかけし、お客様の満足度が下がるというのはあり得る話だ。そこに至るまでの過程の中で、KPIを設定しそのKPI目標の達成に全力を注ぐ。そうしているうちに、結果がでているというのが望ましい。

また、販売ロープレはやる価値があると思う。特に経験のない者に対しては、知識面のキャッチアップや顧客に対しての対応の仕方など学ぶことのできる貴重な機会だ。ロープレについては、営業会社であれば、皆経験済みだと思うが、キーエンス流は、ロープレを毎日行う。あらゆる顧客パターンを想定し、語彙力、表現力を磨くためにロープレをするという。成績の判断ではなく、顧客へ向き合うトレーニングの場所である。時間は10分から15分ほどの短い時間で構わないので、できるだけ毎日継続するというのが、どうやらポイントのようだ。その他、社内SFAを作るというのもあるが、金融営業に必要な自社SFAについて個人的にオピニオンがあり、これは自社で実行しているので、実現したらローンチしたいと思う。金融営業を平準化し、だれでも成果を出せるような仕組みを構築するのは非常に難しいと思われる。ただし、営業をDXし、セールスが使いやすいようなSFAの構築することには可能性があると個人的には感じている

最後になるが、本書には、営業だけでなく、ありとあらゆる分野におけるキーワードやエッセンスが詰まっている。本書を手にとって、自身のビジネスの参考にしてもらえたら幸いである。

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