投信直販会社とは?メリット、デメリットや代表的な会社、市場シェアについて解説

投信直販会社とは?メリット、デメリットや代表的な会社、市場シェアについて解説

皆さまこんにちは。KxShareの大村です。

今回のテーマは、投信直販会社とは?です。私の書いた第1回コラムでは投資信託とは何か見ていきましたが、今回はその投資信託の中でも直接販売している会社とはどのようなものなのかを詳しく見ていこうと思います。また、日本における代表的な投信直販会社も併せて見ていくことにしましょう。

※投資信託の解説はこちらから

投資信託とヘッジファンドの違いとは?

 

投信直販会社とは

まず、投資信託直販会社とは、「運用会社自らが、販売会社を介さずに投資信託を投資家に直接販売する会社」のことです。一般的な投資信託は、販売会社(銀行や証券会社など)で購入することが出来ますが、それら販売会社と実際の投資信託を運用している会社は別々に存在しています。

分かりやすいように投資信託を野菜で例えると、一般的な投資信託は販売会社であるスーパーで野菜を購入するようなものです。一方で、投信直販は農家さんから直接野菜を購入しているイメージになります。スーパーの方が野菜の種類は多いですが、販売会社を仲介するために、その分のコストがかかってきてしまいます。一方の農家さんから直接野菜を購入するときは、仲介がない分安く購入することが出来ます。しかし、ニンジン農家ならニンジンだけジャガイモ農家ならジャガイモしか購入することが出来ません。もちろん他の野菜も作っているかもしれませんがスーパーの品ぞろえまでには及ばないでしょう。


投信直販の概要・特徴
これは、投資信託でも一緒です。販売会社での購入は多くの種類から選ぶことが可能ですが、購入手数料がかかってきます。一方、投信直販のほとんどは購入手数料がかかりません。しかし、商品のラインナップは少なく、中には1本だけの投資信託を運用・販売している投信直販会社もあります

では、投信直販会社自体の数はどの程度あるのでしょうか。結論から言って、現在の投信直販会社の数は10社程度です。さらに言えば、そのうちのほとんどが独立系の運用会社になります。1990年代前半より投信直販は存在しており、その頃には大手も参入していましたが、ターゲットが現在の個人投資家向けではなく、機関投資家向けがほとんどでした。そして、結果的に大手は投信直販から撤退してしまいました。しかし、近年では再び大手が投信直販に参入してきていて緩やかな増加傾向だと思われます。その理由には、インターネットの発達によってネット注文ができるようになったことや投資信託がメジャーになってきたことなどがあります。

投信直販会社の特徴としては、そのファンドごとに一貫した運用哲学が存在することが挙げられます。また、先に述べた通りほとんどの投信直販で購入手数料がかからず、その主な収益源は信託報酬になります。したがって、投資信託の販売数ではなく、着実に運用すること自体が投信直販会社の収益を増やすことに繋がります。つまり、その点で投資家と運用会社の利害が一致しているのです。

投信直販のメリット
投信直販のメリットを整理すると、第一に購入手数料がかからないこと。投資家と運用会社の利害が一致していること。運用方針・運用哲学が一貫しており、投資家に共有されていることなどが挙げられます。そして、当たり前ではありますが運用会社から購入するため誰が運用しているか明確であり、セミナーや月次報告会を通じて投資家と運用会社の距離が近いこともメリットの1つでしょう。

投信直販のデメリット
ここまでを聞くと、いいこと尽くめの投信直販ですが、もちろんデメリットも存在します。まず、投信直販会社の主な収益源となる信託報酬は、一般的なアクティブファンドと比べるとその率は低いですが、一般的なインデックスファンドと比べると高めに設定されている傾向があります。また、独立系で純資産額が少なく、このために一部の顧客が解約した場合であっても、多額の資産が流出することになれば運用が不安定になってしまう可能性があります。加えて、商品ラインナップが少なく、投資信託購入の際にはその運用会社ごとの口座を開設する必要があります。※証券会社で投資信託を購入しようとすれば、証券会社の口座1つで数十から数百の投資信託を選ぶことが出来るでしょう。

そして何より、小規模経営ファンドにおける最も大きなリスクの内の1つは人の交代です。特定のファンドマネージャーの腕を見込んで投資したとしても、人が変われば投資戦略・運用哲学も変わってしまう可能性があるからです。これに伴って、運用成績すらも変わってきてしまう恐れがあります。

ここまで、投信直販とは何かとメリット・デメリットその両方を見てきました。ここからは、3社ほど個別の投信直販会社を具体的に見ていくことにしましょう。

 

投信直販会社の代表例

 

さわかみ投信

まずは、現在の投信直販の源流ともいえる、「さわかみ投信」を見ていきましょう。さわかみ投信株式会社は1999年に設立された日本で最も歴史のある独立系の投信直販会社です。扱っている投資信託は、「さわかみファンド」の一本で、投資対象は国内外の株式が中心になります。

さわかみ投信


さわかみ投信株式会社ホームページより引用
URL:https://www.sawakami.co.jp/

経営理念「本格的な長期投資で世の中をおもしろくしていこう」のもと、国内外の「応援したい企業」に投資し、投資先企業・ファンド仲間・運用会社の三人四脚による長期投資で世の中をおもしろくしていくことをミッションに掲げています。

以下詳しい情報を表でまとめました。

さわかみ投信株式会社
投資信託「さわかみファンド」
設立年1999年8月24日
主な投資対象国内外株式
投資・運用スタンス積極的かつ長期
最高投資責任者(CIO)黒島光昭 ※2022年6月30日に草刈貴弘から交代
純資産額340,071百万円 ※2023年2月27日現在
購入について追加型投信/1万円以上1円単位での申込み
購入時手数料なし
信託報酬当ファンドの純資産総額に対して1.10%(税込み・年率)
顧客数117,735名 ※2023年1月30日現在
その他情報独立系

 

ひふみ投信

続いて見ていくのは、レオス・キャピタルワークスが提供する「ひふみ投信」です。このレオス・キャピタルワークスは、メディアで目にすることも多い藤野英人さんが社長で最高投資責任者です。投資に詳しくない方でも顔は見たことがあるでは?
https://hifumi.rheos.jp/interview/fujino/

ひふみ投信

レオス・キャピタルワークス ひふみ投信 公式サイトより引用
URL:https://hifumi.rheos.jp/

運用の基本方針としては、国内外の長期的な経済循環や構造の変化などを勘案して、適切な国内外の株式市場を選び、そのなかで徹底的な調査・分析を行い、長期的な企業の将来価値に対してその時点での市場価値が割安と考えられる株式を選別しており、長期的に分散投資しています。

また、ひふみ投信のコンセプトは「日本を根っこから元気にする」であり、主に日本の成長企業に投資をする投資信託です。加えて、独自のポートフォリオ哲学も持っています。それが、火風水土心(ひふみとうしん)です。

火風水土心コンセプト

レオス・キャピタルワークス ひふみ投信 公式サイトより引用
URL:https://hifumi.rheos.jp/

こちらも詳しくは以下の表にまとめました。

レオス・キャピタルワークス
投資信託「ひふみ投信」「ひふみワールド」「ひふみらいと」など
※以下は代表的なひふみ投信について
運用開始年2008年
主な投資対象日本の成長企業
投資・運用スタンス長期かつ分散
最高投資責任者(CIO)藤野英人
純資産額142,954百万円 ※2023年2月27日現在
購入について追加型投信/1万円以上1円単位での申込み
購入時手数料なし
信託報酬信託財産の純資産総額に対して1.078%(税込み・年率)
口座数100,007口座 ※2022年4月4日時点
その他情報独立系

 

三井住友DS投信直販ネット

次に、大手SMBCグループの系列である三井住友DSアセットマネジメントが提供するサービス、三井住友DS投信直販ネットを見ていきましょう。今回は、その中でも投資信託「アクティブ元年・日本株ファンド」を詳しく見ていくことにします。

アクティブ元年・日本株ファンド

三井住友DSアセットマネジメント 三井住友DS投信直販ネットホームページより引用
URL:https://direct.smd-am.co.jp/

その運用方針は、企業価値の向上や市場評価の見直しが見込める“いい企業”をしっかり選んで投資し、中長期的な資産形成を計ることです。このファンドでは、三井住友DSアセットマネジメントの経験豊富なファンドマネージャーが、徹底的なリサーチ(企業取材等)を通じて、“いい企業”を発掘し、厳選して運用しているようです。
※当ファンドにおける“いい企業”とは、社会に付加価値を提供し、少し先の未来に企業価値の向上や市場評価の見直しが見込める企業を指します。

三井住友DSアセットマネジメント(三井住友DS投信直販ネット)
投資信託「アクティブ元年・日本株ファンド」「三井住友・DCつみたてNISA・世界分散ファンド」など計8つ
運用開始年2019年 ※「アクティブ元年・日本株ファンド」
主な投資対象国内株式
投資・運用スタンス中長期かつ積極的
ファンドマネージャー古賀直樹 を筆頭に 金子将大 木田裕 梅原康司
純資産額1,369百万円 ※2023年2月28日現在
購入について追加型投信/
スポット購入の場合・1万円以上1円単位での申込み
定額積立プランの場合・1千円以上1千円単位での申し込み
購入時手数料なし
信託報酬ファンドの純資産総額に対して1.078% (税込み・年率)
顧客数117,735名 ※2023年1月30日現在
その他情報SMBCグループ

ここまで投信直販会社を個別に見てきました。ですが、投信直販会社はたったの10社程度しかありません。では、投信直販のシェアはどの程度なのでしょうか。

 

投信直販会社のシェア

結論から言って、日本において投信直販は少数派です。下記グラフは公募投資信託のうち、株式投信の純資産残高と証券会社の比率になっています。

投信直販のシェア

日興リサーチセンター「販売チャネルの変化」より引用(※投資信託協会より日興リサーチセンター作成)
URL:https://www.nikko-research.co.jp/wp-content/uploads/2019/07/8c7194278ff340e2706a12514e2696e9.pdf

2019年6月では、直販の純資産残高は0.9兆円と1%ほどしかありません。また、皆さんがよく知る大手証券会社・大手銀行の運用会社のそのほとんどは直販をしていません。ですが一方で近年では、徐々に投信直販の数は増え、大手も参入しつつあります。これからもしかすると、投信直販が盛り上がっていくのかもしれません。

 

まとめ

おさらいしておくと、投信直販会社とは「運用会社自らが、販売会社を介さずに投資信託を投資家に直接販売する会社」のことです。また、一般的な投資信託との最大の違いは、販売会社の受け取る販売手数料が発生しない分、安く投資信託を提供できるという点です。近年では、徐々に公募投信の直接販売が盛り上がりつつあり、その背景には投資信託の認知度が高まってきたことや、ネット注文が可能になったことなどが挙げられます。さらに言えば、直接販売することで顧客の需要や投資行動を把握し運用会社が商品開発に繋げようとしていることも大きな要因の一つだと考えられます。

一方で現在、投資信託は手数料(信託報酬も含めて)競争が激化しています。この趨勢の中で生き残っていくには、独自のポジションを築くことも大切でしょう。これにより、各運用会社に期待したいことは、手数料競争からの脱却です。たとえば、自社のファンドを崇高な運用哲学・世界観などをもってしてブランド化させて直接販売するのです。ファンドのブランド自体に価値を持たせてあげることが出来れば、他社と差別化し、手数料競争から脱却することも可能になるのではないでしょうか。

人々の思いの価値が高まる今、金融業界のファンビジネス化もそう遠くないかもしれません。そうなった時、自社で運用・販売しているファンドは強力に思われます。手数料競争に勝利もしくは脱却することが出来たならば、投信直販会社もそのうちの1つに当てはまるのではないでしょうか。

 

参考にしたもの

・直販投信.com
URL:https://chokuhan-toshin.com/

・日本経済新聞「広がる投信直販、独自商品で差別化 三井住友DSなど」2019年7月22日
URL:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO47635410S9A720C1EE9000/

・投信資料館「運用会社から直接購入できるファンドにはどのようなファンドがありますか?」
URL:https://www.toushin.com/faq/structure-faq/chokuhan-fund/

・Hatena Blog 銀行員のための教科書「大手資産運用会社の直接販売参入は、個人にとってはほとんど無意味」
URL:https://www.financepensionrealestate.work/entry/2019/03/24/115703

・東証マネ部!「“手軽なのに手厚い”が投資家にとっての最大の魅力 最近よく見かける『直販投信』そのメリット・デメリットとは?」
URL:https://money-bu-jpx.com/news/article029363/

・Nomura Research Institute 「再び注目を集める投信の直接販売」
URL:https://www.nri.com/-/media/Corporate/jp/Files/PDF/knowledge/publication/kinyu_itf/2019/01/itf_201901_5.pdf

・JBpress Digital Innovation Review 「“直販”投信のメリット・デメリットとは」
URL:https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/55616

KxShareのヘッジファンド事業についての詳細は下記リンクをご参照ください。