【VC/ベンチャーキャピタル】とは何者か。 
~ビジネスの最先端シリコンバレーの立役者に迫る~ 後編

皆さまこんにちは。ヘッジファンドのスタートアップである、KxShareの大村です。

お待たせしました、「VCとは?」の後編になります。前回のコラムとあわせてお読みいただけると幸いです。それではまいりましょう、どすこい!

アメリカのVC

ここからは、アメリカにおけるVCを見ていきましょう。現在、AppleやGoogleをはじめ。スタートアップの聖地であるシリコンバレーは、ご存じの通りアメリカにあります。故にアメリカが世界で見てもスタートアップ・VCの先頭を走っています。さらに言えば、VCの起源も実はアメリカにありました。まずは、アメリカにおけるVCの歴史的変遷をたどってみることにしましょう。
 

アメリカにおけるVCの成り立ちから〜現在まで

意外なことに実は、“捕鯨”がVCというビジネススキームの誕生の機会となりました。というのも、スタートアップ同様に捕鯨もハイリスク・ハイリターンなビジネスでした。成功には困難を有する上に、航海も数年かかります。船や船員を用意するのにも元手となる大きな資金が必要でした。ですが、もし鯨を捕まえて帰ってくることが出来たとすれば、鯨油や骨など余すとこなく利用し、多額の利益を受け取ることが出来ます。そして、そこにエージェントと言われる富裕層の投資家と捕鯨船とを繋ぐ仲介役が存在しました。また、彼らは、多くの捕鯨船に分散して投資をし、航海から帰ってきた船がどこでどんな種類の鯨を捕獲したかなどの貴重な情報を蓄積していました。そのため、このノウハウの提供によって、投資先船団の捕鯨の成功確率が高まりました。さながら、現在のVCのようです。
このエージェントこそ、VCの始祖的存在であり、冒険家精神とリスクマネーの融合を引き起こした張本人だったのです。

20世紀にはいると、現在と同様に新興企業への投資を目的とするVCが立ち上がりました。また、20世紀後半となる1979年、規制緩和により年金基金がVCに流れ込むようになり、VCの大きな成長に繋がりました。その後、現在ではユニコーン企業が1000社を超えるような時代になってきています。そして、その多くがやはりアメリカから誕生しています。
ユニコーン企業…起業評価額が10億ドル以上のスタートアップ

近年のアメリカの成長には、スタートアップの聖地であるシリコンバレーから生まれた巨大IT企業の存在が 不可欠なものと言えるでしょう。そしてなんと、その裏側にはVCの存在があったのです。

ここからは、実際にいくつかアメリカのVCを見ていくことにしましょう。
ベンチャーキャピタルの変遷について 詳しくはこちらを参照してください

 

アメリカのVCの代表的な例

セコイアキャピタル
最初にGoogleやAppleへの投資で今や伝説的なVCとなった、セコイアキャピタルについて見ていくことにしましょう。

ホームページより引用
URL:https://www.sequoiacap.com/

1972年、セコイアキャピタルはドン・バレンタイン氏によって創設されました。また、現在に至るまでにAppleやGoogleの他にもYouTube、PayPal、LinkedIn、Zoomなどなど、数多の投資実績を誇っており、名実ともに世界のトップVCの1つでしょう。

また面白いことに、そんな伝説的なVCが実は近年、その運用形態においてパラダイムシフトを起こそうとしています。というのも、セコイアキャピタルは2021年に一般的だった10年というファンドの運用期間をなくし、「エバーグリーンファンド」にすることで無期限でのファンド運用を可能にしたのです。
その理由は、起業家のライフサイクルに合わせて、VCも変わっていく必要があったためと発表しています。サステナブルな価値創出スタートアップとVCその両方が求めている中で、もはや10年という運用期間はあまり意味を持たなくなってしまったようです。一方、運用期間を定めることなく大きな金額を投資家から預かることが出来るのは、セコイアの実績と信頼あってのものでしょう。

アンドリーセン・ホロウィッツ
社名の通り、マーク・アンドリーセンとベン・ホロウィッツが共同で設立しました。
また、「a16z」の略称でも知られています。

ホームページより引用
URL:https://a16z.com/values/

投資対象となるスタートアップは、シリーズAからIPO直前のグロースステージまで、ラウンドに囚われず幅広く投資を行います。また、複数のファンドを合計すると約350億ドルもの資産を運用しています。加えて、アンドリーセン・ホロウィッツの強みは、投資後の支援にあります。例えば、少し前だと音声配信SNS「Clubhouse」を爆発的に流行させた立役者でもあります。
また、近年NFTや暗号通貨などに力を入れていることでも知られています。有名な投資先としては、コインベース、Airbnb、Stripeなどがあります。

日本のVCとアメリカのVCの違い

まずもって日本のVCとアメリカのVCとでは、その資金力に大きな差があります。(ファンドサイズ)

また、アメリカのVCは、日本に比べて出資決定が早く、リスクテイクを積極的に行います。加えて、多くの場合フォローオン投資によって、一度投資したスタートアップを継続的に支援し続けます。これによって、スタートアップの継続的な成長に繋がるとともに、シンジケート投資を促進させ、より大きな額の資金調達を実現させることができるようになるのです。
※専門用語かる~く解説
フォローオン投資…次のラウンドの資金調達でも追加で投資をすること
シンジケート投資…複数のVCが共同で投資をすること

アメリカが最先端であるのに対して、残念ながらVCやスタートアップのことに関して日本は、世界的に見ても遅れているというのが事実です。(下記、記事や資料をご参照ください。)
日本経済新聞 「日本のベンチャー投資額、米国の100分の1」2022/5/7

引用元:内閣府 科学技術・イノベーション推進事務局「スタートアップエコシステムの現状と課題」
URL:https://www8.cao.go.jp/cstp/tyousakai/innovation_ecosystem/5kai/siryo1-1.pdf

日本のスタートアップを盛り上げていくには、VCだけではなく、スタートアップエコシステムを作り上げていく必要があります。このエコシステムによって、起業成功→スタートアップへの投資増加、このサイクルを作っていくことが出来るかが、日本の将来を見据えた際、目下の課題として挙げられることでしょう。
また、現在の日本における、小さなVCやCVCが乱立する状況では、スタートアップを大きく育てるのが難しいという構造的な要因の1つとなってしまっています。

日本でスタートアップエコシステムを創出するためには

では、どうしたらスタートアップエコシステムを実現できるでしょうか。米国のシリコンバレーと比較することで見える日本への示唆について、考えてみましょう。

スタートアップエコシステムを創出するためには、優秀な起業家やその事業を支える資金だけでなく、支援人材および支援システムを充実させていくことも大切です。アメリカではYCなど有名なインキュベート・アクセラレータプログラムがある一方で、日本のアクセラレータプログラムはアメリカほどの機能をしていません。

引用元:内閣府 科学技術・イノベーション推進事務局「スタートアップエコシステムの現状と課題」
URL:https://www8.cao.go.jp/cstp/tyousakai/innovation_ecosystem/5kai/siryo1-1.pdf

また、支援においても大切なのは一過性のものではなく、継続的な支援でしょう。事実として、スタートアップが必要とする支援も多岐にわたっており、資金だけの支援ではなく、多様な支援策をニーズに合わせて提供することが求められます。またその際には、1つの会社や機関で無理に行おうとするのではなく、各々の強みを活かすように様々な機関や支援人材と協力して行うことが効果的ではないでしょうか。

終わりに

ここまでVCのことについて、最後はスタートアップとの関係を含め見てきました。
いまや世界においてスタートアップとVC産業は経済を牽引すると言って過言ではありません。少しばかり、世界に遅れをとっている日本ですがここからです。これからどうするかが最も重要なことです。
実を言うと、私たちKxShareもスタートアップであり絶賛成長中の企業です。さらに、たまたまですが私の父もテック系のスタートアップを経営しています。そのため、他人事としてではなく、心から日本のスタートアップを取り巻く環境がより良いものになっていくことを願っています。
VCとはどのようなものか。また、アメリカのVCと日本のVCとの違い、それに付随するスタートアップ創出環境について、本コラムを通し、理解を深めていただくことはできたでしょうか。
1人でも多くの方に、スタートアップやVCの面白さを気づいていただければ本望です。

あとがき

かくいう私も、スタートアップから生まれる先端技術の力を信じてやまない1人です。現在の価値観ではクレイジーと思われるような技術こそ、世界を根底から変えられる、そして将来の世の中の基盤となっていくパワーを秘めていると確信しています。特にハードテックには初期投資や研究開発費が大量にかかるために、VCの力を必要としています。一方で、ベンチャーキャピタリスト(平たく言うと:VCで働く人)自身がこの研究が本当に実現し、将来の社会に貢献しうるのか判断が難しく、またリターンが返ってくるのかリスクが高く手を出せていない場合が多いのが事実です。
私は、「ニッチな先端技術で世界をより良くする」ことを夢見る起業家・技術者を、人生をかけて支え抜きたいと考えています。まずは、最も大きな障壁となるお金の立場から何かできることはないか。そのための金融に関する専門性を身につけたいというのが、現在のKxShareでのインターンを志望した理由にも繋がっています。
KxShareとロボセンサー技研(父の会社) ひいては、日本のスタートアップ界隈に貢献できるよう絶えず行動を起こして参りたいと思います。熱くなってしまいましたが、最後まで読んでいただきありがとうございました。

先月末より新しいオフィスに移転となったKxShare株式会社。会社の成長に負けないぐらい、私自身成長していけるよう必死でもがいていく所存であります!!!!!

【参考資料】
・経済産業省 経済産業政策局「事務局説明資料(スタートアップについて)」
URL:https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/shin_kijiku/pdf/004_03_00.pdf
・内閣府 科学技術・イノベーション推進事務局「スタートアップエコシステムの現状と課題」
URL:https://www8.cao.go.jp/cstp/tyousakai/innovation_ecosystem/5kai/siryo1-1.pdf
・東大IPC 「VCの種類と特徴を紹介」2022/8/9
URL:https://www.utokyo-ipc.co.jp/column/vc-type/
・東大IPC 「スタートアップとは?ベンチャーとの違いを解説【図解あり】
URL:https://www.utokyo-ipc.co.jp/column/startup/
・ダイヤモンド社 中村幸一郎 カウマン・フェローズ・プログラム「スタートアップ投資のセオリー 米国のベンチャーキャピタリストは何を見ているのか THEORIES OF STARTUP INVESTMENT How to find The Next Unicorn」
・資金調達のミカタ「政府系ベンチャーキャピタルとは?代表的な政府系ベンチャーキャピタルをご紹介」2021/12/13 
URL:https://shikin-mikata.jp/posts/1112/
・新潮社 トム・ニコラス、鈴木立哉/訳 「ベンチャーキャピタル全史」
・Coral Capital「ベンチャーキャピタル(VC)とは?ベンチャー投資の仕組みをわかりやすく」2019/11/20 
URL:https://coralcap.co/2019/11/seed-finance-01/
・Coral Capital「米国トップVC投資先紹介:Sequoia Capitalの2、3月の新規投資」2021/4/12
URL:https://coralcap.co/2021/04/new-investments-by-sequoia/
・Newspicks すなだゆか「【超入門】VCを学べば、スタートアップが100倍分かる」
URL:https://newspicks.com/book/2774/article/5646371?ref=book_2774
・NewsPicks 中島洋一「【VC年表】経済の先端はベンチャー生態系の進化にあり」
URL:https://newspicks.com/news/6820893/body/
・NewsPicks 中島洋一「成功を独占し続けるトップ1%VCの投資哲学」
URL:https://newspicks.com/news/6816165/body/?ref=user_9780
・NewsPicks 洪 由姫「【伊佐山元】孫正義ファンドに、なぜシリコンバレー投資家は怒るのか」
URL:https://newspicks.com/news/3053725/body/

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